- 真保裕一「密告」 2000年03月09日
- 真保裕一を読み出したのはわりと最近のことである。2年前くらいだったか講談社文庫で東野圭吾&真保裕一フェアをやっているのを見て読んだのが最初だった。それまでは名前さえほとんど認識していなかったと思う。彼の書くものが本格物などとはジャンルが異なるため私の視界に入ってこなかったのだと思う。最近は「ホワイトアウト」の映画化が決まるなどして、あちらこちらで名前を見かけるようになった。
彼の小説の多くでは何かの専門家、しかも比較的地味な専門家が主人公だ。どうやってその題材に目を付けるのか。毎回非常に専門的なことまで詳しく描かれていて感心させられる。
さて現実の世界でも不祥事続発で警察が注目を集めている折、偶然ではあるが最近警察物を立て続けに読んでいる。本書は身に覚えのない密告者の汚名を着せられた警察官の物語だ。汚名をすすぐため数々の妨害を受けながらも真相に向かって奔走する。ハードボイルドと呼ぶほどは主人公はタフではなく(いやふつうの感覚からいえば十分タフだが)その判断は少し違うのではないかとか、感情に流されすぎではないかとか思う場面もあるが、隠された真実に一歩一歩と近づいていく真保得意の展開で読ませる。7点。
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