- 若竹七海「古書店アゼリアの死体」 2001年05月05日
- 「ヴィラ・マグノリアの殺人」の海辺の町・葉崎市を再び舞台にしたコージー・ミステリの第二弾。コージー・ミステリって何?という方、実は私もよく分かりません。誰か教えて。何となく雰囲気から察するところはあるのだが。辞書によると【cozy】(家・場所などが)居ごこちのよい,気持ちのよい;(雰囲気などが)くつろいだ,和気あいあいとした、である。
作品中に「ヴィラ・マグノリアの殺人」と関連する話題が出てきたりするが、もちろん内容的にはまったく別のお話である。「ヴィラ・マグノリア」の方はもう細部は忘れているが、もうひとつ感心しなかった記憶がある。謎解きも、物語と文章自身の面白さも物足りなかった。しかし今回の「古書店アゼリア」は若竹七海の本領発揮でなかなかの出来である。 まずユーモアがよい。冒頭の場面から思わず顔が緩むのを止められない。通勤電車の中で読んでいたのだから、ひとりで本を見てにやついているというのはあまり格好の良いものではないのだがしょうがない。こういう思わずクスリとしてしまう場面がいくつかあって、作品の魅力のひとつになっている。望むらくは、その手のユーモアはこの3倍くらい入れて置いて欲しかった。 ほかに本作品の魅力と言えばやはりロマンス小説に関する話題だろう。私はと言えばロマンス小説などにはとんと縁が無く、「風とともに去りぬ」や「マディソン郡の橋」を映画で見たくらいで、「レベッカ」さえ読んでいない。巻末には作中に出て来たロマンス小説についての注釈が付いているので、本書はロマンス小説の入門にもなるかもしれない。実際自分もちょっとだけ読みたくなっているr(^^;) 肝心の謎解きもしっかりしていた。ただし地味だし、あまり自分好みでは無い。ここが少し減点材料。せっかく魅力的な個性を持った登場人物がたくさん出てくるのだから、ここは謎解きよりも彼らの活躍ぶりの描写をとことんやればもっと面白くなったのではないかと思う(推理小説の読者としてはあるまじき感想だが・・)。ちょっとおまけで7.5点。
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