- 東野圭吾「秘密」 2000年09月09日
- 最近東野作品を読む機会が少ない。もちろん彼が新作を出していないわけではなく、むしろ精力的に次々と新しい本を出版している(しかもどれもが話題作!!)。しかしハードカバーは買うのはハードルが高いので結局文庫に落ちるのを待つか、図書館で見つけるしかない。ところが最近の彼の活躍によって知名度も上がり図書館の本も品切れ状態。数年前は本棚に10冊くらい並んでいたのに最近では1,2冊くらいだったりする。たぶん全部貸し出し中なのだ(一応近所の図書館の古い蔵書はぜんぶ読んていると思うから良いのだけど)。その東野氏の名前を一気に広めたのがたぶん本作品だったのではなかろうか。広末涼子主演で映画にもなり(観ていないけど)、直木賞候補にもなり(このときの受賞作は宮部みゆきの「理由」)、第52回日本推理作家協会賞を受賞した「秘密」は長らく図書館の予約数上位ランキングに名を連ねていた。予約なんてめんどくさいことをしない私が読めるのは当分先のことだなあと思っていたのだが、ようやく一般書架に置いてあった(というかまだ書架に戻されていない返却本のところにあった)のをGetした。
母親と娘バス事故に巻き込まれ、目覚めた娘の意識は死んだはずの母親のものだった、というストーリー。そんな不可思議な現象を最初は案外あっさりと受け止めてしまうのだが、娘(中身は妻)の成長につれて夫であり父親である主人公はだんだん様々な葛藤に苦しむことになる。実は自分的には、この辺の彼の心情は分からなくもないがちょっと行き過ぎじゃない?という感じであまり感心しなかった。このままずるずると結末を迎えてしまうのかと心配したのだが、そこはさすが東野圭吾。ラストに差し掛かったところから急展開し、最後は一気に読み進んだ。不覚にもちょっとウルウル来たし(電車の中だったのに)、結局読後感も非常に良いものになった。贅沢を言えばただの人情ものにするのではなく、もっと設定を生かした事件というか物語が構築してあるとよかったのだが(東野圭吾ならそれができる!と思う)。8点。
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