- 折原一「黄色館の秘密」 2000年11月30日
- 黒星警部シリーズの長編。このシリーズは本格推理のパロディとして認識されているが、厳密にはパロディとしてよりも本格推理小説としての構成に軸足が置かれている気がする。パロディ的視点と笑いを取り入れた本格推理と言えば良いか。しかしながら本作品に対する本格推理小説としての私の評価は高くない。雪に閉じこめられた「黄色館」で起こる連続密室殺人事件がメインの話だが、黒星警部の迷推理で二転三転する展開は退屈気味だし、最後になって明らかになる事件の全貌も特別な面白味はない。謎が盛り沢山だったわりには解決で感心できるのはわずかだった。
むしろ本作品の一番の目玉は、(おそらく作者の意図するところではなかっただろうが)残り三分の一くらいのところで早々に明かされる或る仕掛けだったと思う。折原一らしい趣向で見事に騙されたのだが、メインとはまったく関係がないのが残念である。やはりこういう作品はもっと徹底的にパロディとして作り上げた方が良くなるように感じた。6点。
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