読書日記

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有栖川有栖「作家小説」 2002年01月18日

 内容が「作家」に関わるものを集めている、有栖川有栖のノンシリーズ短編集
 
「書く機械」超一流になるための編集者と作家の執念。念願はかなうが。。結末はストレートで、ひねりが欲しい。6.5点。
「殺しにくるもの」最初、連続殺人事件と作家へのファンレターが交互に書かれている。ラスト部分に差し掛かる前に、これは折原一的な展開かな、と見当を付けた。まあそれは予想通りだったのだが、うわ、このラストは反則(@_@;)。でも私にはインパクトがあったので7.5点。
「締切二日前」主人公の作家が小説のネタをひねり出すために、アイデアノートやメモカードを延々とひっくり返すのだが、これらのボツネタってもしかして実際の有栖川有栖のノートから取っているのかなあ?このまま終わるのかと思ったらラストに一工夫があった。7点。
「奇骨先生」これのみ書き下ろし。謎らしきものはあるがミステリではないよなあ、これ。小説としての面白味はないが出版業界の現状と問題点についての勉強にはなる。6点。
「サイン会の憂鬱」超有名人ならばともかく、あまり有名でない有名人(なんだそれ)にとってサイン会は心配の種にもなるようだ。そのサイン会でハプニング続出! 安易なオチで終わるかと思ったらラスト一行にささやかなどんでん返しが。7点。
「作家漫才」作家を本業とするふたりの漫才という設定で全編会話のみで構成される。作家稼業の裏話や苦労話。6.5点。
「書かないでくれます?」ホラー?ラストは予想がつく。もっと「なぜ?」の説明が欲しい。6点。
「夢物語」作者には珍しいSFファンタジー。異世界に出現した作家の話。しかしそれだけに終わってしまっているのが残念。6.5点。
 

K.J.ローリング(松岡佑子 訳)「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」 2002年01月16日

 結局、現時点で日本語訳が出ている3冊を一気に読んでしまった。原書はすでに4巻まで世に出ており、全7巻の予定で年1冊ずつ刊行の予定だそうだ。
 
 3巻目でもまた例によって、夏休みの里帰りでダーズリー家にいるところから始まる。さらにその上今回は、おじさんの妹だというおばさんまで加わってハリーは最悪の夏休みを過ごしていた。とうとう切れたハリーは禁じられている魔法を使って家を飛び出るが、どうにか無事にホグワーツに戻って新学期を迎えることができた。しかしシリウス・ブラックなるヴォルデモート卿の子分がアズカバンから脱獄してハリーの命を狙っているという。ロックハート先生の代わりに新しく来た「闇の魔術に対する防衛術」のリーマス・ルーピン先生から身を守る魔法を教わったりしながら、ハリーはまた多忙で困難な一年を過ごすことになる。
 
 前作までの感想で誉めてばかりだったので少々難点もあげてみよう。子供向けながら大人の鑑賞に堪えうるよくできた小説なのだがところどころにはおかしなところもある。例えば毎年の深刻な事件に対して、偉大な魔法使いであるはずのダンブルドア校長やマクゴナガル先生の活躍が少な過ぎて頼りなく見える。少年探偵団とか、子供が主人公の子供向け小説では仕方ないかもしれないが、大の大人を差し置いて子供だけが大活躍というのはやはり不自然である。ロックハート先生のような分かりやすい性格破綻者が堂々と教師になれてしまうのもおかしな話だろう。スネイプ先生のえこひいきと横暴ぶりを放置しているのも、どうもダンブルドア校長の指導力を疑ってしまう(スネイプの造形も分かりにくい。一巻の最後では結構筋の通った人にも見えるが、その後はやっぱりただの根性ひん曲がり男だ)。クィディッチのルールがまた不可解。もしかして読みが足りないのかもしれないが、シーカーが金のスニッチを取って150点獲得して試合終了というんだけど。。それだとクアッフルを地道にゴールして10点ずつ稼ぐチェイサーの立場がないではないか?それに(あまりありそうにないけど)仮に150点以上負けていた場合はスニッチを取ると負けが確定するの?うーん不可解(やはり読みが足りないか?)。他にも様々なお菓子の設定や語呂合わせの教科書の題名(韻を踏んだ原語を踏襲した訳は苦心のあとが窺える)などはやっぱり子供向けレベル(まあ面白いけど)。
 
 と、結構文句を書いたが、これはあくまで細部をつつけばという話で、本筋に関してはもうただただ賞賛するばかりだ。この三巻にしても一、二巻同様、ラストの盛り上がり、意外な事実、見事な伏線、どれも素晴らしい。この作者の力は本物である。とくに今回は全体に関わる謎が多く明らかにされて物語に深みを与えており、読者の多くが3冊の中でこれがいちばん面白いと評価している(あとがきより)のはなるほどと思える。
 
 年一冊の刊行で、物語の中でも一冊ごとに一年の時間が過ぎていく。はじめは子供だったハリーは物語が終わる頃には(17歳!)どの様に成長しているのか。これも楽しみのひとつである。次の物語を読むのが本当に待ち遠しい。8点。
 

K.J.ローリング(松岡佑子 訳)「ハリー・ポッターと秘密の部屋」 2002年01月12日

 ハリー・ポッターの第2作目。前作の最後にダーズリー家に一時里帰りをしたハリーは、最初のうちは(魔法を使うぞとほのめかして)何とかやっていたが、学校の外では魔法を使ってはいけない決まりを知られて部屋に閉じこめられていた。そこに親友のロンとその兄たち(例の双子の)がハリーを連れ出しにやってくる。
 
 そんなこんなで今回もまた面白く珍しい体験を繰り返しながら、ハリーは2年生になってホグワーツに戻った。戻るまでが一苦労だったのだが、やっぱり戻ってからも大変なことがいろいろとハリーを待ち受けていた。さらに、ホグワーツには秘密の部屋があってそこから出てきた怪物が次々と生徒を襲っているらしい。。怪物の正体は?
 
 前作同様、今回も魔法使いの世界は奇妙奇天烈で面白いことが目白押しである。クィディッチの試合はスリリングでスピード感にあふれているし、この巻に登場のロックハート先生は見かけと違ってトンでもない性格の持ち主である。いろいろなエピソードが次から次で、興味が尽きることがない。しかしここまでは、しょせん児童文学、とへそ曲がりの人なら言うかも知れない。だがしかし、やはりこれも前作同様、本書の読み所・圧巻はラストの「例のあの人」= ヴォルデモート卿との対決場面である。もし映像作品だったら目が釘付けで片時も目が離せなくなることだろう。幸いにも小説なのでちょっとトイレ休憩を取るくらいはできるが、やはりついつい一気読みしてしまう。対決場面でスリルとサスペンスが盛り上がることはもちろん、意外な真相は明らかになるし、また前半にさりげなく触れられていた数々の伏線がきちんと生かされていて、この完成度の高さはまったく驚くばかりなのである。普段(私もそうだが)児童文学なんて読まない人も、読書好きならぜひ読むべき。ミステリ好きにもお薦めである。8点。
 

J.K.ローリング(松岡佑子 訳)「ハリー・ポッターと賢者の石」 2002年01月09日

 言うまでもなく、世界的な大大ベストセラー。映画も好調なようである。9と3/4番線がどうの、と言われて今までちんぷんかんぷんだったが、やっと何のことか分かった(^-^) 読むのは遅きに失するかもしれないが、まあこれに限ったことでもない。それにまだまだブームは続いている。いや、映画化でますます盛り上がっているところだ。妹の本を借りて読む。
 
 子供向けのファンタジーで本の字は大きめ、漢字は全部ふりがな付きである。だいたい小学校4,5年生以上なら読めるだろう。正月に会った小六の従兄弟もハマっているようだ。しかし決して子供だましではなく面白かった。よくあるファンタジーと違って、魔法使いの世界もある面とても人間社会っぽいところも楽しい。魔法使いが空を飛ぶための箒にもいろんなタイプがあって、最新モデルとなると高価で憧れの的なのである。子供のお菓子もカード付きのチョコレートが人気だったりする。ただしカードの絵(写真)はピカチューでも野球選手でもなく、有名魔法使いである。しかも動く!
 
 意地の悪い親戚ダーズリー一家の中で育ったハリーは、突然自分が魔法使いであることを知らされて魔法魔術学校ホグワーツへ入学する。ハリーはホグワーツで、新しくできた親友や憎らしい同級生、厳格な先生や意地悪な先生らに囲まれて様々な体験をする。ハイライトは、ハリーの両親を殺した「例のあの人」の復活を阻止するべく賢者の石を守るために立ち上がるところだ。賢者の石の隠し場所に行き着くまでに待ち受けている数々の罠はまるでインディー・ジョーンズの魔宮である。ここら辺は(さっきは違うと書いたけど)子供だましと言えば子供だましなのだけどゲーム的で面白い。しかし何と言っても驚いたのは罠をかいくぐった先で明らかになる意外な事実。その上実は伏線もたくさん張られていたことが分かる。ファンタジーという枠にとらわれず、ミステリー的にも楽しめる大変よくできた物語だった。大人気も納得。8点。
 

新野剛志「クラムジー・カンパニー」 2002年01月04日

雑誌に発表していた短編5作品を収録。タイトル(clumsy company)は「不器用な仲間」の意味なのだそうで、不器用ながらもたくましく生きる男たちを描いた作品集となっている。
 
「オジジナル・ウェディング」探偵が婚約者の浮気調査を依頼されるが、もちろん依頼には裏がある。そして探偵は依頼者に重ねて思い出すある事情を抱えていた。二つの謎が平行するが互いの関連が薄いのが残念。6.5点。
「幸福なボブ」酔っぱらいのフリーライターが飲み屋の落書きにに書かれた見ず知らずの"ボブ"を助けるために奮闘する。いくら酔っぱらっていてもちょっと物好きがすぎるとは思うが。。7点。
「ちいちゃな男」小学生の男の子が主人公で、そのせいかハードボイルドと言うよりは、まるで宮部みゆき作品のような展開と心温まるラスト。7.5点。
「公僕の鎖」おっと。なんと「八月のマルクス」の主人公・元コメディアンの笠原が再登場である。引退から1年半(ってことは「マルクス」より前の話だな)、経営するマンションに住む女性のトラブルに巻き込まれる。彼女の両親を偽って訪れた夫婦の目的は何なのか。さすが乱歩賞受賞作の番外編だけあってよい出来の作品だ。8点。
「ステップ」別れた妻と、彼女が再婚しそして離婚した相手の元ダンサー。まだ未練がある別れた妻を心配する主人公だが、元妻が心配しているのは元ダンサー。複雑な人間関係の間で、詳細は謎のまま主人公は元ダンサーを助けることになる。この元ダンサーがなかなか渋く、本書でもっともハードボイルドな性格をしている。8点。
 

藤田宣永「鋼鉄の騎士」 2001年12月28日

 日本推理作家協会賞・長編部門(1995)、日本冒険小説協会大賞・黄金の鷲賞(1995)を受賞。125回直木賞(2001上)を「愛の領分」で受賞した藤田宣永の力作だ。分厚い文庫本が上下巻の大著である。
 
 時代は第二次世界大戦前夜。ドイツではヒットラーが政権を握り、スペインでは内戦が勃発。日本もドイツと手を組みファシズムの道を歩んでいる。一方、ソ連ではスターリンが支配し、また一方では帝政ロシアの復活を目論む亡命ロシア人のグループがいる。そんなきな臭さが立ちこめる時代の欧州、主にはフランスが舞台で熾烈な諜報戦が繰り広げられる。主人公はフランスに武官として駐留する父親を持つ日本人青年・義正。革命に憧れたこともある義正は、父親の元を離れカーレーサーを目指すが、思わぬ内に各国の諜報戦に巻き込まれ命まで狙われることになる。
 
 分厚い本だし、登場人物の名前は覚えられないし、文章もあまり読みやすくは無いし(読みにくいと言うほどでもないが)、最初の方はなかなか先へ読み進められずにいた。まあ、個人的に忙しい時期だったこともあるのだが。しかし読むうちにだんだん引き込まれてきた。偶然の邂逅が過剰なのは気になるが、なかなか手に汗握る場面も多くて読み応えがある。前半に感じた読みにくさは後半ではほとんど感じなかった。登場人物も魅力的なのが多いが弓王子なる盗賊が白眉
 
 直木賞作品をはじめ最近は恋愛小説に傾いている作者だが、やっぱり推理小説や冒険小説も書いてもらいたい。7.5点。
 

岡嶋二人「殺人者志願」 2001年12月03日

 岡嶋二人作品ではわざとらしいくらいヒキが強い場面から始まることが多い。その他にも、単調にならないようにちょっとしたくすぐりを加えた会話など、小説作法のイロハがきっちりと守られていて模範的な作品ばかりである。本書では主人公の夫婦が殺人を依頼される場面から始まる。
 
 依頼されたのはお金にルーズで借金を抱えた若い夫婦。借金を抱えていても気楽に生きているこの夫婦は殺人も結構気楽に引き受ける。しかしこのふたり、悪人というわけでもなく(単にだらしないだけ)、どことなく憎めない性格である。依頼したのは妻の遠い親戚。借金を肩代わりする引き替えにある人物を殺して欲しいというのだ。しかしこの依頼者も殺人を頼むわりにはほとんど普通のおじさんである。
 
 さて、気楽に生きているふたりも、殺人が現実味をおびてくるに従って、さすがにことの重大さ、人の命を奪うことの恐ろしさに気付き始めることになる。いざ実行の段階でどうしても体が動かなかったふたりだが、ここから事態は思いもよらなかった方向に転がり始めるのだった。7点。
 

鯨統一郎「千年紀末古事記伝ONOGORO」 2001年11月28日

 ははあ。感想が難しい作品だ。基本は古事記の神話に作者なりのアレンジを施した物語である。古典を現代的に焼き直しているのは星新一や阿刀田高の作品を思い出させる。そう言えば書きっぷりというか文体もどことなく似ている。
 
 どこをどうアレンジしているのかは、オリジナルを詳しく知っているわけではないのでよく分からない。しかし、わりとオリジナルに忠実な箇所もあれば、相当大胆に改変しているところもあるようである。また神々は何かというと"交合い"、まるで官能小説を読んでいる様な気にさせられる(いや、実際はそれほどでもないのだが)。
 
 途中、有名なアマテラスが天の岩屋戸に隠れる場面では、何をどうしたか密室殺人事件になってしまう。いよいよここからオリジナルを離れて本格推理小説に化けるのか、と期待したのだが謎はあっさり解かれ、殺されたアマテラスも生き返った。結局その後もたんたんとオリジナル古事記に沿って話は進む。オリジナルでは矛盾があったりあやふやだった部分を整合性が付くように改変しているのは良いのだが、どうせならもっと勝手気ままに作者独自の話を作ってしまった方が良かった。ちなみにラストの一文は笑える。もしかして本書はこのオチのためだけに書かれたとか?6.5点。
 

西澤保彦「幻惑密室」 2001年11月24日

 神麻嗣子-チョーモンイン-シリーズの長編一作目。単行本としてもこれが一冊目であるが、お話としては「念力密室」(未読)の方が先なんだそうである。ちなみに長編二作目の「実況中死」を一年ほど前に先に読んだ。ミステリ作家・保科匡雄、超能力者問題秘密対策委員会の出張相談員(見習)・神麻嗣子、警官には見えないスタイル抜群の美女警部・能解匡雄が不可思議な超能力現象の謎に挑む。相変わらず中心キャラはマンガチックで強烈な個性を発揮している。
 
 今回のSF設定もなかなか面白い(相当恣意的ではあるのだが)。どんな能力かは途中まで読み進まないと説明されないのでここでも書かないが、現象としては、ある家から出られなくなり、しかも閉じこめられていた間は時間がほとんど進んでいないという、時間と空間がねじ曲げられたかのような事件が起こる。そしてそんな一種の密室の中で殺人事件が発生する。だれがこんな密室を作った(超能力者な)のか? そして何のために?
 
 さて確認しないと忘れそうであるが、特異なキャラやSFはあくまで舞台設定の一部で、本書の眼目は本格推理にある。で、その眼目の本格推理部分の出来はそこそこ。意外性はあるのだが、消去法で出てきた答えだけに説得力には欠ける。目に付く破綻もなくパズルはきちんと完成しているが、読者を唸らせるようなカタルシスは感じなかった。7点。
 

歌野晶午「正月十一日、鏡殺し」 2001年11月19日

 歌野晶午のノンシリーズ短編集。この人の短編って初めてだ。以下、各話ごとの感想。
 
「盗聴」電話の盗聴をしていて耳に入った不思議な会話の謎。あれの相似性は知らなかった。今度確かめてみよう。本筋とは関係ないが爽やかに終わって読後感も良い。7点。
「逃亡者 大河内清秀」虚実判然としないふたつのストーリーが絡み合う。ただしそこに必然性はない。6.5点。
「猫部屋の亡者」最後に謎が明かされるが、読者はみんな最初から気付いているのではないか? 主人公はなぜ気付かないのか。5点。
「記憶の囚人」出来損ないの詩のような文体で始まる。最初のやつはこの文体も理解できるが、途中にも普通の文章と詩文調の文章が混じるのは必然性もなく、読みにくい。5.5点。
「美神崩壊」ラストはある意味恐怖でもあるが、なんか唐突で違和感がある。6点。
「プラットホームのカオス」問題生徒がプラットホームから転落して死亡した。現場にいたのは彼にいじめられていた少年と担任教師。事故か。殺人か。真相は当事者たちの視点から語られるが、さらなる真相が読者には明かされる。7点。
「正月十一日、鏡殺し」何かあるとは思っていたが、そう来たか。うーん。でも後味の悪さったらない。6.5点。
 

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