- 奥田英朗「最悪」 2002年04月01日
- まだ雨は降っていない。しかし今にも降り出しそうな憂鬱な曇り空。そんな感じがする毎日の生活に疲れた三者が交互に描かれる。無理難題を押しつけられる、吹けば飛ぶような零細町工場の経営者。一流銀行に勤めるが煩わしい人間関係などに悩まされるOL。そしてパチンコとカツアゲで生活する不良青年。彼らの日常はこれまでも決して恵まれたものではなかったのだが、やがてポツリポツリと水滴が落ち始め、気が付けば土砂降りに。。
不良青年は後先考えないタイプで自業自得の面もあるし、町工場のおじさんは善良なんだけどパニックになりやすく頼りない。けどそういう要素があるにしても、やはり最悪としか言いようのない、巡り合わせが悪いときってあるものだ。雪だるま式で膨らみ上がった不運は、一旦坂道を転がりだしたらもう止まらない。そして三人の邂逅のとき、最悪の事態が誰の目にも明かなものとなる。 このままバッドエンドはいやだな、でもこんな状態になってまだ救えるのだろうか、とハラハラしながらラストに突入した。まあまるきりのハッピーエンドにはならなかったが、どうやら最悪の状態はみな脱したようで、前向きのラストである。良かったホント。7.5点。
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