- 貴志祐介「青の炎」 2000年10月31日
- これまでの貴志祐介作品とはずいぶん趣の異なる作品に仕上がっている。ホラーではないし特異な設定もない。それどころか現代社会を等身大で映した社会派小説と言える作品になっている。
折しも少年法改正案が衆議院を通過したところだが、虚構の世界とは言え本作品を読むと、やはり厳罰化に重点を置いた改正は意味がないのではないかと思う。それぞれに複雑な事情を抱えていることが多い少年犯罪では、成年犯罪以上に、ただ罰を与えて良しとするのではなく前向きな取り扱いが必要なはずだ。また本書にも出てくるマスコミの無分別な対応や、野次馬の無責任な行動こそよく考えなければならない事だろう。場当たり的な少年法改正をしている場合ではない。
さて現代日本の社会状況を背景にして書かれた本作品であるが、そんな社会が抱える問題を避けられなかったためだろうか悲しい結末を迎える。ありきたりと言えばありきたりな結末だ。はじめから容易に予想が付いてたし、それ故に避けて欲しいと思いながら読んでいたのだがやはり他に方法が見つからなかったのか。7.5点。
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