- 新野剛志「あぽやん」 2009年08月22日
| あぽやん
著:新野 剛志 文藝春秋 単行本 2008/04
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第139回(2008年上半期)直木賞にノミネートされていた作品だ。乱歩賞を受賞してデビューした作者の、これまでのハードボイルド風な作風とは異なり、どちらかというとコメディ系だ。ほのぼの、というわけでもないが、シリアスではなく、身の回りのドタバタ劇である。タイトルからしてそれはうかがえるわけだが、直木賞ノミネート時に概要を読んで意外に思ったのを覚えている。ちなみに「あぽやん」とは空港を表す略語である APO から出た隠語で、旅行会社の空港勤務社員のことを指すのだそうである。 連作短編になっており、不本意ながら成田空港勤務になったツアー旅行会社の遠藤慶太が主人公である。まわりには一風変わった先輩や、ほかにもわりとはっきりとしたキャラクターの同僚や部下がいる。各話では何かしら事件というかトラブルというかイレギュラーが起こり、右往左往しながらも、お客様を気持ちよく送り出すという職業意識を第一に決着していく。 イレギュラーの発生やその後のトラブルの連鎖などには、いささか強引に話を作ったなという印象が否めない。しかしラストのまとめ方はなかなか秀逸で、そこが評価されて直木賞ノミネートとなったのだろうか(文藝春秋刊でもあるし…)。 各話ごとにまとまったドタバタ劇になるストーリーは、連続テレビドラマなんかにはぴったりな気がする。脇役もそれぞれキャラが立っており、そこもテレビドラマ向きだろう。それを狙って書かれたというわけでもないだろうが、ドラマ化という話は無いのかな?ドタバタを強調しすぎないで、人間ドラマの部分をうまく描ければ良いドラマになると思うのだけど。点数はちょっと厳しめで7点。
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