- シドニー・シェルダン(中山和郎, 天馬 龍行・訳)「ゲームの達人」 2004年07月26日
- 超訳シリーズというのは今も続いているのだろうか。本書「ゲームの達人」はアカデミー出版の超訳シリーズのフラグシップ的な役割を果たし、大ベストセラーになった本だ。もう15年は昔のことだろうか。翻訳者と日本語文章作成者を別にして、外国小説を自然な日本語に訳すという超訳の方式はたしかに目の付けどころが良かったと思う。翻訳物は読みにくい、という読者は多かったに違いないからだ(自分もそう)。ただ最近では、普通の翻訳小説もかなり読みやすくなってきている。この変化は、あるいは超訳シリーズがきっかけになっているのかもしれない。とすると本書はその点でもエポックメイキングな作品だったわけだ。
「ゲームの達人」は当時のベストセラーになっただけでなく、人気英語教材にも使われていることで今も名の知れた作品だろう。そして、作者シドニー・シェルダンの知名度も高い。しかし私自身はあまり読んだことがなかった。巷から聞こえる情報からは正直言ってそれほど魅力を感じなかった。典型的な作風は、ご都合主義な展開と、深みに欠けるプロットという印象がある。 さて、実際この作品もその典型的な作風なのだが、それでも読んでる途中はけっこう面白い。ご都合主義で展開が見え見えではあるのだが、天国と地獄を猛スピードで行ったり来たりするかの如き、ハラハラ感満点のストーリーは退屈しない。ただラストにはもう少し工夫が欲しかった。どんな物語でもラストが印象を大きく左右する。見え見えでも良いからカタルシスのある結末が用意されていればかなりしまりが出るのだが。ということでおまけ気味の7点。
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