- 東野圭吾「天使の耳」 2002年12月19日
- 再読である。私の記憶が確かならば、この短編集こそが私が初めて読んだ東野圭吾だった。たぶん文庫化した直後だ。今では私は東野圭吾の大ファンなのだが、なぜか初読時の印象は芳しくなく、このあと東野圭吾の2冊目を読むまでにずいぶん時間がかかったと記憶している。あれから東野作品はかなり読んだし、その間に東野圭吾という作家自身も世間的にもよく知られた人気のベテラン作家になっているが、果たして再読で印象は変わるだろうか。
「天使の耳」ずっと昔に読んだにもかかわらず、珍しくもスジをほとんど覚えている。それだけ印象に残っていたわけだが、先にも書いたとおりどちらかと言えば良くない印象だった。なぜかと言えばたぶん、あざとささえ感じる後味が悪い結末だったからだ。再読してもやはりそれは変わらなかったが、プロットとしては良くできたストーリーだと再認識した。たぶん初読時は6点だったのが今回は7点。 「分離帯」法律はしばしば納得がいかない結論を出す。それは仕方がないことかもしれないが、もし我が身となるとやはり。。7点。 「危険な若葉」出来心で初心者の車をあおって事故を起こさせたことから、話は意外な方向へと向かう。7点。 「通りゃんせ」路上駐車はまったくありふれた光景だが、場合によっては人に取り返しの付かない迷惑をかけることもある。7点。 「捨てないで」走行中の車からの無神経な投げ捨てが引き起こした悲劇。結末は偶然だが、起こるべくして起こった偶然。7.5点。 「鏡の中で」これも内容をよく覚えていた。一瞬の油断が重大な結末を招く。ともかくも車の運転は慎重に(私は免許を持ってないんだけど)。7点。 すべての物語で軸になっているのは、交通事故あるいはその他、車が関係した事故によって、突然理不尽な不幸に見舞われたというストーリーだ。表題作をはじめとして、全体的に雰囲気は暗い。この作者の話ってみんなこうなのだろうか、と考えたのが、初読時に好きになれなかった理由だったと思う。しかし総じてレベルは高い作品集である。読者の間でも結構評価が高いのはうなずける。
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