- 川端裕人「川の名前」 2007年01月04日
- 『小学校五年生たちが活躍する「川小説」です』(by作者)とか、川と少年の物語です、とか聞いて、読む前は「なんのことやら」と思っていたのだが、読んで納得。タイトルである「川の名前」というのも、なるほど、そういう意味が込められているのかと腑に落ちた。
ふと自分の家の周辺の川を思い出してみるが、一番近い川でもかなりの距離がある。しかし実は家のすぐ横の道は、現在は暗渠になっているが、数十年前は地上を流れる川だったそうだ。都市部ではこのような暗渠が多いのだろうな。本書を読んだあとだととくに寂しく感じてしまう。昔はどこでももっと、川は身近な存在だったのだろうか。 自分勝手で傍若無人な級友だとか絵に描いたようなずるい大人などの悪役、ギャップはありながらもそれなりに子どもたちと理解し合える大人たち、そういった様々な人たちに囲まれて、近所の川と池を舞台に、タマちゃん騒動を彷彿とさせるペンギン騒動を通して成長していく少年たちの物語である。主役と仲間の少年たちは年齢的にも大人びたところと子どもっぽいところが混在している。いささかリアリティに欠けるきらいはあるが、いずれも魅力的なキャラで固めてあり、ビルドゥングスロマンとして誰もが納得するであろう秀作だった。7.5点。
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