- ダン・ブラウン(越前敏弥・訳)「ダ・ヴィンチ・コード 上・下」 2007年04月03日
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言わずと知れた世界的大ベストセラーで映画(2006年)も大ヒットした作品である。遅まきながらようやく手にした。2004年の「このミステリーがすごい!」海外部門第4位、「文春ミステリーベスト10」では第1位。 フィクションだが、作者が「この小説における芸術作品、建築物、文書、秘密儀式に関する記述は、すべて事実に基づいている。」と書いたこともあって、各界で議論を巻き起こしたらしい。実際に読んでみれば、やはりこれはフィクションで、ほとんどの部分は説得力のある「事実」に成り得ないことは、とくに専門知識を持っていなくとも、ほとんどのひとが分かるだろう。しかし陰謀論とかに目がない人たちにとって格好の対象になるだろうこともよく分かる。ちなみに、映画を巡っては教会から反発があったり、国によってはR-18指定になったり上映禁止措置というところもあったそうだ。 そういった議論はともかく、小説としては評判に違わず相当おもしろかった。ストーリーの要所要所には謎につぐ謎が仕掛けられており、とくに中盤の展開は目を離せない。読む前の勝手な想像では、極端に言えばラストに至るまでは伏線を仕込むための長大なプロローグで、最後の最後で衝撃的な真相が明かされる、というストーリーを想像していたのだが、本書の読み所はこの中盤にあった。実は読後に映画も見たのだが、このあたりがかなり駆け足になってしまうため、やはり原作本にはかなわない(本で読んでよく理解できなかった部分が映像で理解できたりして、見て損はないと思う)。欲を言えば、ラストにもうひとつインパクトの強い謎解きがあれば良かったのだが、迎えた終幕はわりと大人しめな印象だった。が、とにかく全体としては申し分なくエキサイティングな展開と魅惑的な謎解きがギッシリと詰まった内容だったので、大満足である。 これも読むまで知らなかったのだが、本作は同主人公によるシリーズの第2弾で、ロバート・ラングドン・シリーズ第1弾「天使と悪魔」がすでに刊行されている。そちらも是非読んでみたい。8点。
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