- 長岡弘樹「傍聞き」 2010年05月07日
| 傍聞き
著:長岡 弘樹 双葉社 単行本 2008/10
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「迷い箱」「899」「傍聞き」「迷走」の4編を収録した短編集。表題作「傍聞き」は第61回(2008年)日本推理作家協会賞短編部門を受賞した。 「迷い箱」読者は全員途中で気付いているだろうことに、主人公が最後の最後になるまで気付かないのが不自然極まりない。心温まるよい話なのだが。6点。 「899」やはりしっくりこない部分やスッキリとしない部分が多いのだが、消防士が赤ん坊を救出する物語。6.5点。 「傍聞き」直接言われるより偶然耳にしたことの方が信用しやすいという心理「漏れ聞き効果」をうまくストーリーの核に取り入れている。7.5点。 「迷走」車内に仇とも言える人物が収容された救急車を迷走させる救急隊員。その真の意図とは?7.5点。 作者は2003年に「真夏の車輪」という作品で第25回小説推理新人賞を受賞した人らしい。本書は2007年と2008年に発表された作品だ。最初のふたつ、2007年の作品は、ちぐはぐ感が強く、小説作りに拙い感じを受けた。要素はいろいろ盛り込んでいるのだが、うまく消化できていない印象だ。一方、2008年の作品ふたつは、各要素がうまく絡み合ってまとまりがあり、もともとの作者の持ち味なのだろう、どの話にも共通する人情話としての良さも発揮した良作となっていた。
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