- 奥田英朗「ララピポ」 2010年03月16日
| ララピポ
著:奥田 英朗 幻冬舎 単行本 2005/09
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全6話の短編集。最初のふたつを読んだところまでは、同じような雰囲気だがまったく別個の物語の短編集なのかと思っていたら、三話目以降は、前の作品の登場人物のひとりに視点が移って、並行する物語としてつながっていくという趣向だった。最初の話だけ浮いているなと思ったら、最終話からつながって、めでたく全話がリンクした。雑誌不定期連載だったようだが、あるいは連載途中で方針を変えたのかもしれない。 どことなくアブナイというか爛れた雰囲気を漂わせながらも、最初は一応ふつうの人のありふれた日常的生活なのだが、少しずつ、しかし着実に、何ものかに後押しされるように、斜面を転がり落ちる雪だまのように、破滅へ向かって進んでいくというのが共通するプロットだ。作者得意の、あるいはお気に入りのパターンである。ただ、途中の展開はそれなりに面白いのだが、とくに前半の話ではオチに工夫が無く、紙数も尽きたのでここで終わります、みたいなあっけない感じがして物足りない。しかし後半の話になるほど、結末にも少しずつ力が入ってきて、最終話では、前の方の話に絡んでちょっとほっとさせる展開もあったりして、さすが直木賞受賞のベテラン作家といえる、よくできたラストになっていた。そういえば作者が直木賞を受賞したのはこの連載途中のことだ。はじめは適当に力を抜きながらの連載だったのが、だんだん力を入れるようになったのだろうか。ちなみにタイトルの「ララピポ」の意味も最終話で分かる。これも分かってみれば本書によく合っている。点数は前半がイマイチだったので少し厳しめの6.5点。
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