- 西澤保彦「幻視時代」 2011年02月03日
| 幻視時代
著:西澤 保彦 中央公論新社 単行本 2010/10
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偶然撮影されていた18年前の写真。そこには、その4年前に死んだはずの少女の姿が映っていた。 そんな不思議な謎の提示から物語は始まる。そして場面は一気に22年前、主人公・矢渡利悠人の高校生時代へと移る。悠人は高校で文芸部に入り、悠人の亡くなった母と一緒に大学時代に同人活動を行っていたという文芸部顧問教師・白州と出会う。そして文芸部の同級生には才能あふれる文学少女・風祭飛鳥がいた。彼女は応募した作品で、見事、新人賞を受賞して、一躍新進気鋭の美少女作家として時の人となる。しかしそこで事件が起こる…。 作品の前半は、22年前と18年前を振り返る形でストーリーが進んで行き、すべての事件はその中で起こる。そして中盤を過ぎたところで現代へと立ち戻り、そこから以降は作者得意の、というかお馴染みの、飲んだくれながらの推理合戦となる。悠人の文芸部の後輩で、今は作家になっているオークラ、そして編集者の長廻とともに、過去の事件と謎の写真の真相をあーでもないこーでもないと言い合った末にたどり着いた真相とは? 最後のエピローグがなかなか効いていた。これによって事件の見方にちょっとだけ新しい視点が加わって全体が引き締まっている。最近、西澤保彦はこの手の仕掛けが多いな。7点。
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