- 湊かなえ「告白」 2009年04月15日
| 告白
著:湊 かなえ 双葉社 単行本 2008/08/05
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「このミス!」で第4位、「文春ミステリーベスト10」では第1位、そして2009年の本屋大賞を獲得した作者のデビュー作。 第29回小説推理新人賞(2007年)を受賞した「聖職者」は、中学校の女性教師が、ホームルームで自分の娘を殺した犯人がこのクラスの中にいると語り出す衝撃的なストーリー。まあストーリー自体はミステリとして特別にすごいということはないのだが(と言っても高レベルの出来)、短い中に様々な要素を盛り込みながらも一切無駄が無く伏線となって、最後にはすべてが収束する。相当に推敲を重ねたのではないかと思える非常に丁寧な作りである。 本書の最大の特色は、その新人賞受賞の短編を第一章としたうえで、さらに五つの章を加えて、全六章の長編にして一冊の作品としてあることだ。初めの三章はそれぞれ雑誌掲載作、後半の三章は書き下ろしだ。それぞれの章ごとに一人称で語る人物を変えて、ひとつの事件から始まる悲劇の連鎖を描いていく。連作短編風でもあるが、後ろの方の話は前を読んでいないと分からないだろう。一方、前から順に読んできたら、どこで読み終えることもできる。しかし、読み進めるごとに事件の輪郭が少しずつ変わっていくのだ。 人によっては章が進むごとに加わる新たになる展開に、そこまでやらせるのかと、あざとさを感じるかもしれない。しかし意外性が身上のミステリ小説的にはこれはアリだろう。それぞれの章の、だんだん盛り上げてきて最後にバタバタッと意外性のある展開を見せながら結末になだれ込む流れも巧い。ハッピーエンドにはならずちょっとぞっとさせる感じで終わるところは、オカルト要素などは一切無いのだが、ホラーを読んだときに感じるような感触がした。7.5点
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