読書日記

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岡崎琢磨「珈琲店タレーランの事件簿 2 彼女はカフェオレの夢を見る」 2015年01月17日

珈琲店タレーランの事件簿 2 彼女はカフェオレの夢を見る (宝島社文庫)

 著:岡崎 琢磨
宝島社 文庫
2013/04/25

 第一弾に引き続いて、シリーズ第二弾を読む。本書では、珈琲店「タレーラン」のバリスタ・切間美星の妹の美空が登場する。
 
 大枠の構成は第一作と同様である。すなわち、前半は各章ごとに独立した日常の謎路線の話を中心に進んでいき、その上で全体にまたがったストーリーを仕掛けて、ラストでどかんと破裂させるという構成だ。内容の面で言うと、良くも悪くも、長所も短所も第一作を受け継いでいた。読んでいる途中は、いささか「それはどうか」と感じる欠点の部分が気になることもあったが、それでも読み終わった後の満足感は十分だった。デビュー作である第一作は大幅な改稿もあっての出来かとも思ったが、第二作でもクオリティは維持していたので一安心である。うん、面白い。
 
 主要登場人物の名前がみなコーヒーがらみだったり、コミカルな場面もあったりと、ライトテイストかと思いきや、シリアスな展開になだれ込むわけなのだが、最後には意表を突くどんでん返しがあって、実は随所に伏線も仕込まれていたことが分かって、なかなか充実していた。シリーズの二冊を立て続けに読んだが、すでに第三弾も出ており、さらにはまもなく第四弾が発売予定だと言うことだ。是非読みたい。7.5点。
 

岡崎琢磨「珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を」 2015年01月13日

珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 著:岡崎 琢磨
宝島社 文庫
2012/08/04

 第10回『このミステリーがすごい!』大賞の最終候補作となった作品で、宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズから『このミス』大賞2012隠し玉として発刊されて、ヒットを飛ばしているシリーズの第一作となった作品だ。
 
 舞台は京都。ちなみに本作は、京都のご当地ミステリとしての側面もあることから、第1回京都本大賞を受賞している。その京都の一角にある珈琲店「タレーラン」で、バリスタ・切間美星(きりまみほし)が淹れるコーヒーの味に感激した主人公アオヤマ青年。彼が常連客として店に通う間に巡り会う数々の謎を、聡明な美星がコーヒー豆を碾きながら次々と解き明かしていく。
 
 読み始めはつい、先日読んだばかりの、本作のパロディでもある東川篤哉「純喫茶「一服堂」の四季」のイメージに引っ張られてしまったが、だんだんと本作本来のイメージが湧いてきた。本書は、構成が全七章に章分けされており、プロローグとエピローグが付いている。基本的には各章ごとの一話完結スタイルであるが、後半に入ると徐々に美星さんを脅かす不穏な出来事の雰囲気が盛り上がってくる。
 
 忌憚なく言えば、日常の謎路線とは言え、いまいち魅力に欠ける印象は否めない。ミステリの謎、キャラ造形、プロット構成、文章、もちろんどれも素人レベルではなくプロのレベルと言って良いのだが、今ひとつ物足りなさを感じる。少なくともプロの中ではトップレベルとは言いがたい。このあたりが大賞は逃した理由でもあるのだろう(本書はそれでも全面的に改稿されているが)。一方で、わりと限られた世界の中で物語は進むのだが、この物語の世界観というか舞台設定は非常に魅力的だった。ここが隠し球として刊行に至った理由であろうし、その判断にまったく異存は無い。さすが熟練の選考委員の目は確かである。
 
 ちなみにこの作品には、コーヒーにまつわる蘊蓄が豊富に盛り込まれていて、コーヒー好きにはここも魅力。さらには、コーヒー以外の蘊蓄もあって、そのあたりも楽しめた。続けて2作目を読む予定。7.5点。
 

加納朋子「トオリヌケ キンシ」 2015年01月07日

トオリヌケ キンシ

 著:加納 朋子
文藝春秋 単行本
2014/10/14

 本書の内容紹介には「短編の名手・加納朋子が贈る六つの物語」とある。「六つの奇跡の物語」とも。さて、どのような物語か。
 
「トオリヌケ キンシ」ただの隙間のような、細い路地に入り込んでみた小学3年生男子の出会いと経験。やがて成長した後に、再びの邂逅で知ることになった事とは。7点。
「平穏で平凡で、幸運な人生」小説で時々見かける共感覚という能力。なかなか興味深く、不思議な能力だが、加納朋子の手にかかるとこんな物語になるのか。7.5点。
「空蝉」幼い頃の悪夢のような、いや、悪夢そのものの記憶。大学で知り合った親切な先輩によってその記憶の真相が明かされる。7点。
「フー・アー・ユー」人の顔や表情が認識できないという相貌失認の高校生が主人公のちょっと変わった青春物語。ここまで重度なのは珍しいと思うが、こんな症状があるのか。7.5点。
「座敷童と兎と亀と」妻を亡くして日常にぽっかりと空いた穴を埋めるようにして座敷童が出現した!?そのワケと顛末は。心温まる結末が良い。7.5点。
「この出口の無い、閉ざされた部屋で」夢の中で夢と自覚し、意思でコントロールも出来るという「明晰夢」を見る青年。前作とのちょっとしたつながりもあった。7.5点。
 
 終盤になってようやく気がついたのだが、本書に収められた短編はいずれも、特異な病気や症例が題材になっている。症例と言っても、必ずしもマイナスなものばかりではなく、逆に、通常の人には無い優れた能力として現れるものもある。取り上げられているのは、脳科学的で器質的な症状だったり、精神的・心理的な症例であったりと様々だ。
 
 こういうのをテーマにしたミステリだと、多くの作者はミステリアスでサスペンスフルな作品に仕上げることが多いと思うが、そこは、ちょっとした怖さなど演出しながらも、しみじみと切なかったり、じんわりと温もりを感じさせる作風の加納朋子である。いかにも彼女らしい物語が並んでいた。
 
 余談だが、調べてみると、先天的に相貌失認の症状がある人の割合は2%ほどにもなると言う話で、びっくり。そんなに多いとは思わなかった。ただし、大半は日常生活に支障が出ない程度で、自覚も無い場合が多いらしい。
 

東野圭吾「マスカレード・イブ」 2014年12月20日

マスカレード・イブ (集英社文庫)

 著:東野 圭吾
集英社 ペーパーバック
2014/08/21

 先日読んだ「マスカレード・ホテル」の続編にして前日譚である短・中編を4編収録。ホテル・コルテシア東京のフロントクラーク山岸尚美と、警視庁捜査一課の新田浩介の物語だ。
 
「それぞれの仮面」山岸尚美が就職4年目でフロント業務を始めたばかりの頃の物語。学生時代の元彼が登場。そしてあるトラブルが発生する。ミステリ的趣向はきっちりでさすがだが、後味がすっきりとしないのが減点ポイント。7点。
「ルーキー登場」捜査一課に配属されたばかりの新田浩介が、真実を見抜く鋭い洞察力をさっそく発揮する。ただ、真相は明らかになったのに、しっかりと事件の決着が付かないで終わるところは不満。7点。
「仮面と覆面」ホテル・コルテシア東京に缶詰となって滞在する覆面作家に一目会いたいオタクなファンとの攻防。そしてこの覆面作家が隠していることとは。7.5点。
「マスカレード・イブ」一番長い本編は書き下ろし。ある殺人事件の捜査の中で、尚美と新田がニアミスするのだが、このときは結局、直接顔を合わせることも無く、互いの名前さえも知らぬままで終わる。しかしこのときすでに、尚美の観察力と新田の推理力の相乗効果が真相を明らかにして、事件解決へと導くことになる。エピローグはちょっと蛇足だった気がする。7.5点。
 
 本書が「新シリーズ第2弾!!」と紹介されていると言うことは、このシリーズはさらに続いていくということか。次はいつの時点のどんな物語になるのだろう。短編?それともまた長編になるのだろうか。「マスカレード」シリーズのさらなる続編、期待したい。
 

七尾与史「死亡フラグが立ちました!」 2014年12月12日

死亡フラグが立ちました! (宝島社文庫) (宝島社文庫 C な 5-1)

 著:七尾 与史
宝島社 文庫
2010/07/06

 サブタイトルが『凶器は...バナナの皮!? 殺人事件』第8回『このミステリーがすごい!』大賞(2009年)の最終候補作である。候補作と言うことはつまり、大賞は獲っていない。優秀賞も逃している。要は落選作品なのだが、「隠し玉」として刊行された。巻末の解説で大森望氏が述べているように、賞は運不運の要素も大きいわけで、たしかに本作はそのまま埋もれさせるには惜しい面白さだった。実際、この、もともと選外だった作品を出版する「隠し球」シリーズからは、けっこうなベストセラーも生まれている。本作もそのうちの一冊というわけだ。
 
 ただし、出版にあたっては大幅な改稿が行われたそうだ。選考委員が揃って指摘していた"冗長さ"という弱点を取り除くため、分量はなんと半分近くまで削ったのだとか。そのおかげか、テンポ良く読むことが出来た。都市伝説などを扱う二流雑誌に記事を書いているフリーライター陣内が主人公。雑誌廃刊の危機に直面し、編集長の命令によって通称「死神」という凄腕の殺し屋の取材に取り組むことになる。「節操が無い」ほどの才能の持ち主の先輩や、強面のヤクザといった個性の強い脇役キャラ達と共に殺し屋の正体に迫っていく…。
 
 それにしても、確実に、しかも事故死と見せかけて殺人を遂行する「死神」の手口は、この上なくB級感にあふれていてマンガ的である。サブタイトルであるバナナの皮というのもなんと実際に使われている手口だし、サブリミナル効果なんてのも利用されている。馬鹿らしさ加減が満載のだが、それでも面白い。大森氏がピタゴラ装置になぞらえている連鎖反応でターゲットを死に導くという殺人術は、意外性があって、まさにピタゴラスイッチを見ている面白さがあった。
 
 不満を挙げるとするとラストだ。完全な決着を付けない形で終わってしまうのは、少しばかり欲求不満が残る。しかしなんとこの作品は、続編がすでに2冊も出ているのか。続編を読めば、この不満を埋めてくれるだろうか。7.5点。
 

真保裕一「ダブル・フォールト」 2014年11月29日

ダブル・フォールト

 著:真保 裕一
集英社 単行本
2014/10/03

 弁護士事務所にイソ弁として所属している新米弁護士が、殺人事件の弁護に取り組むというのが基本ストーリー。感情的な反応をぶつけてくる被害者の娘など、弁護活動の周辺でいくらかの出来事が起こるが、全般には地味目の展開である。前半はおもに、弁護のための事件調査と、裁判の場で検察側と証拠をぶつけ合う法廷劇という形で進んでいく。弁護士を描くドラマはもちろん珍しいものではないが、本作もそのひとつとして、弁護士の実情や苦労を描いた職業小説のようにも読めるだろう。
 
 弁護活動を続けるうちに、事件のあらましがはっきりとしてきて、やがて裁判員裁判で結審、判決を迎える。しかし、依頼人である被疑者が何か隠し事をしているように感じて、弁護士としてどのような行動を取るべきか、どんな態度で臨むべきかに主人公は悩む。そして、落ち着きを取り戻した被害者の娘と共に行った事件の独自調査から裏の事情が浮かび上がってくる。
 
 意外な事実が出てくるとは言え、まあそれでもやはり地味は地味なのだが、しっかりとした構成で、読後感も良い。著者の初期作品群である、漢字二文字タイトルが付いた、いわゆる「小役人シリーズ」に近い味わいの作品となっていた。7.5点。
 

歌野晶午「ずっとあなたが好きでした」 2014年11月16日

ずっとあなたが好きでした

 著:歌野 晶午
文藝春秋 単行本
2014/10/14

 表題作ほか全13話を収めた「恋愛小説集」、ではあるが…。帯があれば、普通の恋愛小説ではないことが書かれているが、表紙や折り返しの紹介文を見て、普通の爽やかで切ない恋愛小説集だと思って読む人はいないだろうか。もちろん、作者の名を知っている人ならそうは思わないだろうけど。歌野晶午流の恋愛小説とはさて如何なるものか
 
「ずっとあなたが好きでした」恋路を邪魔するバイト先の上司。ラスト一行のどんでん返し、なのだが、唐突すぎてちょっと説得力が無い。6点。
「黄泉路より」ネットを介した集団自殺という物騒な始まり方だが、ラストは意外にもブラックではなくハッピーエンド。7点。
「遠い初恋」子供らしい苦い体験の物語は、意外な方向からの幕引きとなる。ちょっとすっきりしないかな。6.5点。
「別れの刃」学生劇団に所属する大学生が出会った恋の行方なのだが、ぶつ切れな終わり方は不満。5.5点。
「ドレスと留袖」嫌がらせにストーカー?身の回りに不穏な出来事が続くストーリーに、作者が仕掛けた罠。7点。
「マドンナと王子のキューピッド」ラジオ番組への常連投稿者の高校生男子の恋の行方。偶然要素が少し多い気もする。7点。
「まどろみ」じゃれ合う男女の会話が延々続いて、どうなるのかと思ったら、とくに何も無く終わってしまった。5点。
「幻の女」書き下ろし。不遇をかこつ男にかかった殺人容疑。事件の真相と謎の女の正体は?7.5点。
「匿名で恋をして」前半は互いに名前も知らない間柄のネットコミュニケーションの形で話が進むので「密室殺人ゲーム」シリーズを思い出した。7点。
「舞姫」パリの地で出会ったダンサーの彼女と、働き先で起こった事件。真犯人は?ラストが何のためだか唐突で意味不明。7点。
「女!」何てことの無い話かと思ったら、最後が意外な展開に。ミステリ的ではないが。7点。
「錦の袋はタイムカプセル」書き下ろし。これまでのバラバラな物語をつないでいく大胆不敵な一編になっていた。7.5点。
「散る花、咲く花」花を買って病院の親を見舞うふたり。そこに隠されていたのは。7点。
 
 恋愛とミステリの融合の結果を楽しみにしていたが、全体的にいまひとつだった。それぞれ読み始めの印象とは異なる、思わぬ方向に転がる物語が多かったが、必ずしも意味のある変化では無かったり、ノープランで書き始めた結果こうなったのだろうか、という印象を受けた。企みに満ちたトリッキーなミステリという、歌野晶午らしさがあまり出ていない。本書の中では書き下ろしの二作品が良かった。とくに「錦の袋は…」が、かなり力業ではあるが、これは実に作者らしい趣向だった。
 

東川篤哉「純喫茶「一服堂」の四季」 2014年11月07日

純喫茶「一服堂」の四季

 著:東川 篤哉
講談社 単行本(ソフトカバー)
2014/10/09

 表紙が、最近人気の、岡崎琢磨『珈琲店タレーランの事件簿』シリーズそっくりという、東川篤哉にしか出来ない遊びっぷりである。鎌倉の路地裏にある純喫茶「一服堂」の店主の名前からして安楽椅子(あんらく・よりこ)だ。設定も『タレーラン』に似せてあるのか、また、同系統の嚆矢たる『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズ(三上延)も混ざっているのか、そちらを未読のためよく分からない。どちらのシリーズも読みたいと思っているのだが。
 
 さて、本書は安楽椅子探偵ものである。作者の得意ジャンルだ。探偵となるのは、喫茶店をやっているのに極端な人見知りで、一見の客にはしどろもどろでガチガチになるヨリ子さん。ところが、彼女は事件の話を聞くと性格が一変。強気で乱暴で高飛車になって(でも自虐ネタを挟む)、真相をずばりと指摘する推理を語り出す。
 
 春夏秋冬の4話から構成されている。特別に素晴らしいとは言わないが、安楽椅子探偵ものとしてまずまずなかなかのレベルで楽しめる。そして、作者の最大の魅力である、読者を笑いに誘う軽妙な文章も、一時期は上滑り気味に感じたこともあったものだが、最近は安定感が出てきて魅力たっぷりである。
 
 個性的なキャラクタ造形や物語の作りから言えば、これは「謎解きはディナーのあとで」の系列で、似た路線ながらこれも今後シリーズ化するのかと思っていたのだが……、(ここからややネタバレにつき、未読の方は注意)まさか最後にあんな仕掛けが待っていたとはびっくりだ。各話が春夏秋冬なのも、表紙絵さえも、ぜんぶ仕掛けのうちだったのか。してやられた。これ、映像化は無理だよなあ。。各話に登場した特徴あるキャラたちも最後には揃って大団円となり、意外なほど満足感をもって読み終えた。7.5点。
 

北村薫、他「9の扉」 2014年10月29日

9の扉 (角川文庫)

 著:北村 薫 , 他
角川書店 文庫
2013/11/22

 北村薫のアイデアから生まれたリレー短編集執筆者が次の執筆者を指名して"お題"を渡すというバトンリレーで、各話は基本的に独立したストーリーになっているが、作者によっては前の話をうまく取り入れて工夫している。本書は初め、2009年に単行本として出版されて、2013年に文庫化された。
 
北村薫「くしゅん」ふわふわとつかみ所の無い、夢のような話だと思ってたら、後半は本当に夢の話になった。5.5点。
法月綸太郎「まよい猫」お題は「猫」。迷子ペット探偵のもとに奇妙な依頼人が訪れるところから始まる。オチが効いていた。7.5点。
殊能将之「キラキラコウモリ」お題は「コウモリ」。著者紹介を見て思い出した。そうだった。作者は昨年(2013年)若くして他界されたのだった。合掌
鳥飼否宇「ブラックジョーク」お題は「芸人」。スランプの芸人の話が、最後はホラーな一品に仕立て上げていた。7点。
麻耶雄嵩「バッド・テイスト」お題は「スコッチ」。前話を受けてのストーリー展開で、意外で突飛なサスペンス。7点。
竹本健治「依存のお茶会」お題は「蜻蛉」。場違いなお茶会に招待された女子大生の目から見た、ある事件の真相。6.5点。
貫井徳郎「帳尻」お題は「飛び石」。禍福はあざなえる縄のごとし。でも、欲を出しすぎるといけない、というお話?7.5点。
歌野晶午「母ちゃん、おれだよ、おれおれ」お題は「一千万円」。前話を全面的に受けてのストーリー。タイトル通りオレオレ詐欺なのだが、二転三転の持って行き方は、さすが歌野晶午。7.5点。
辻村深月「さくら日和」お題は「サクラ」。鯛焼き屋さんのサクラの理由は。小学生の女の子視点の物語。さりげなくリレーのループを閉じている。7点。
 
 自分的ベストは歌野晶午。前話の続編設定で面白かった。各作者でバトンを逆順につないだ巻末のあとがきによると、さらにその後の展開も考えていたのだが、枚数が足りずに永遠の未発表にしたとか。貫井徳郎も言っているように、是非どこかで活字にしてもらいたい。
 

横山秀夫「震度0」 2014年10月23日

震度0 (朝日文庫 よ 15-1)

 著:横山 秀夫
朝日新聞出版 文庫
2008/04/04

 読み残していた横山作品で、2005年発表の作品だ。書かれている時代は1995年。阪神大震災が発生し、震源地から離れたN県警も被災地救援のための応援部隊派遣準備で忙しくなる。そんな状況で、N県警は同時にもう一つの激震に見舞われていた。県警組織の要とも言える地位にある警務課長の失踪だ。本人の意思で姿を消したのか、それても事件に巻き込まれたのか。
 
 主な登場人物は、N県警のトップを占める、本部長をはじめとした幹部たちである。大問題、大スキャンダルになりかねない警務課長の失踪に、組織は大揺れに揺れるのだが、組織防衛ばかりでなく、自己の保身を第一に考える幹部連中。悪人とまでは言わないが、誰も彼もみな、利己的で阿漕な人物ばかりなので、共感して感情移入できる人物はほぼ皆無である。しかしながら、不快な読書になるかと言えばそんなことは無くて、保身と野心に明け暮れる、キャリア組と地元の叩き上げ組が入り交じってのパワーゲームのサスペンスに、先へ先へとどんどん読んでしまった。
 
 少し残念だったのは、思わせぶりなタイトルに込められた意味を期待していたところ、一応意味はあったのだが、大して深いものでは無かった。あと、阪神大震災と絡ませた設定もそれほどの意味は無かったようだ。ラストではわずかながら、それまで利己的に振る舞ってきた幹部達の一部に良心を感じさせる終わり方になっていた。ただ、さほどすっきりとした結末を迎えたわけでは無い。ありきたりではあるがむしろ、この幹部達を懲らしめるような結末にしてくれれば、もっとすっきりとしたかも。それだと平凡すぎるだろうか。7.5点。
 

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