- 東野圭吾「流星の絆」 2011年10月17日
| 流星の絆
著:東野 圭吾 講談社 単行本 2008/03/05
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単行本刊行が2008年3月。早々にテレビドラマ化されてその年の10月から放映されていた(見ていないのでストーリーの原作との違いなどは分からない)こともあり、かなり話題にもなっていた作品だ。例によって旬を過ぎた今ごろになって読むが、もちろん良い作品はいつ読んでも良い。 超人気作家の東野圭吾ということで、読者の期待や要求は当然高くなる。これだけ上がった高いハードルを超えていくのは相当たいへんなことだ。そりゃあ東野圭吾とて人間だからつまずくこともあろうが、多くの場合にしっかりと高いハードルを越えてくるのは驚異的である。これもそんな一冊だった。 まだ小学生だった兄・弟・妹の三兄弟が、流星群を見るために親に内緒で深夜に家を抜け出して、帰ってきたとき目にしたのは両親が何者かに殺されているという悲惨な光景だった。その後施設で成長し、やがて社会の荒波の中で生きる術として選んだのは人には言えない稼業であったが、兄弟の絆は変わらない。そんな生活の中、未解決のまま時効を迎えようとしていた事件の犯人と思われる人物を発見する。 衝撃的で痛ましい事件から始まった物語は、その後の展開も決して明るくはない。このままストレートに悲劇的な結末で終わるのではないかと恐れながら読み進めた。凡百の作家が書いたなら、きっとそうなっていただろう。それでもサスペンスとしては、ひとつの作品として十分に成り立つ。しかし、東野圭吾はそうしない。意外な真相と真犯人。そして、しみじみと安心して読み終えられるラスト。少々強引なところもあるが、きちんと筋は通っており、どうやったらこんなストーリーが書けるのかと感心するばかりだ。8点。
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