- 加納朋子「ささら さや」 2002年07月19日
- 霊魂だとかあの世だとかの存在はこれっぽっちも信じていない。でもこんな物語を読むと幽霊になれるものならなってみたい気もする。いちまーい、にまーい、とかおどろおどろしい幽霊はイヤだが、単に肉体がないだけで性格も記憶も生きていたときと変わらず、ましてやいま生きている人を助けることが出来る幽霊なら素敵である。
気が弱くて泣き虫のサヤは、交通事故で頼れる夫を失い、生まれたての赤ん坊ユウスケを抱えて世間の荒波に放り込まれてしまう。しかし死んだ夫が幽霊となってサヤたちを見守ってくれていることが分かる。普段は見えないし話も出来ないのだが、サヤが困っているときには幽霊が見える体質を持った誰かの体を借りてサヤを助けてくれるのだ。 収録作品は、「トランジット・パッセンジャー」「羅針盤のない船」「笹の宿」「空っぽの箱」「ダイヤモンドキッズ」「待っている女」「ささら さや」「トワイライト・メッセンジャー」 加納朋子の本領を100%発揮した連作短編集である。爽やかであるが切ない筋立てと、周りを囲む愉快なキャラクターで、万人に自信を持ってお薦めできる作品だ。7.5点。
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