- 東直己「義八郎商店街」 2005年06月27日
- 義八郎商店街という変わった名前の商店街は、地上げの危機など幾多のピンチを商店主たちが自力で乗り越えてきた伝統を持つ由緒ある商店街である。商店の顔触れは老人が多いのだが、みなそれぞれ何かの武術を身に付けており武闘派商店街として知られていた。近くの公園には商店街の名前を取って義八郎と呼ばれているホームレスが住んでいる。ホームレスとは言え、いつも身綺麗にし、商店街の掃除に精を出す義八郎は、商店街の皆にとっても仲間であった。
そんな商店街を舞台にした連作集である。バイタリティ溢れるお年寄りがたくさん出てくるあたりが、少しだけ清水義範の「やっとかめ探偵団シリーズ」を思い起こさせる。しかし話の傾向はちょっと、いや、後半になるほどかなり違ってくる。何か不穏な事件が起こり、しかしその多くは不思議な力でうまく収まるというのが主なパターンだ。不思議な現象は義八郎が絡んでいるらしいのだが最初のうちは謎である。物語の雰囲気的にはいい味を出しているのだが、事件の解決に至る展開が、ともかく不思議な力が働きました、というだけで小説的な面白味に欠ける。それに大抵の話は丸く収まるのだが、中にはバッドエンド的な話もあってそれは後味が悪い。 さて、終盤で義八郎が何者なのか明らかになり、義八郎商店街の謎も明かされるのだが、ちょっと中途半端な感じだ。そして、敵役というか悪役も登場するのだがこちらはかなり説明不足だし、なにより結局、悪役の勝ちのまま終わってしまうのがいただけない。雰囲気は良いのだから、個別の話も全体も、ぜんぶハッピーエンド的にまとめてあればもっと楽しめたのだがなあ。6.5点。
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