- 月村了衛「機龍警察 暗黒市場」 2015年09月11日
第34回吉川英治文学新人賞(2013年)受賞作品。機龍警察シリーズの第三弾である。「このミステリーがすごい!(2013年版)」第3位、「ミステリーが読みたい!(早川書房)」第4位、「文春ミステリーベスト10」第9位。 これまで、龍機兵の搭乗要員3名に順番に光を当ててきて、本作では最後のひとり、元はロシアの刑事という経歴を持つユーリ・オズノフ警部を中心にして語られる。物語の幕開けは、警視庁との契約が破棄となったオズノフ警部が、武器売買の裏社会に身を投じているという衝撃の状況だ。これは一体どういうことなのか。何があったのか。 前作までと同様に、ユーリの過去について、その生い立ちから、刑事時代の活躍、非情な裏切り、そしてその後の流れ流れた果てに沖津にスカウトされて現在に至るまでのストーリーが丁寧に描かれていく。こういったドラマによって作品に深みを与えると同時に、迫力のある戦闘アクションシーンなどで徹底的なエンターテインメントとしても極上の小説に仕上げているのは、毎回毎回すごい。 毎回すごいと言えば、伏線の回収技が見事である。前半で語られていたあれやこれやが、きちんと後半で生かされる。最初の方で違和感を感じていた部分も、最後にはしっかりと納得させられるようになっている。緊迫感のある展開も、その語り口もまた見事で、重厚さの中にも軽妙さを感じられ、重くなり過ぎたりせずに読みやすい。高い技量と筆力のなせる技だ。一度読み出すとなかなか途中で止められなくなる。寝る前に読んでいるとついつい夜更かししてしまって、翌日は寝不足になってしまうのだ。8点。
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