- 垣根涼介「ヒートアイランド」 2006年01月04日
- もっぱら表には出せない裏金を狙って現金強奪を行うプロの強盗3人組が、ヤクザが経営するカジノから巨額の売上金を奪った。ところがトラブルで現金の一部が入ったバッグをストリートギャングの若者ふたりに持ち逃げされてしまう。一方、持ち逃げした若者は予想外の大金が詰まったバッグに驚いて、所属するグループ「雅」のリーダー・アキとその相棒カオルに相談する。プロの強盗は現金奪還を目指し、カジノを襲われた暴力団組織もアキたちを追う。さらに縄張り拡大を狙う近隣のヤクザも首を突っ込んできて、ピンチに追い込まれたアキはある計画を立てる。
それぞれの思惑が複雑に絡み合いながら、1つのストーリーを作り上げていくプロットは秀逸。また、街でケンカパティーを主催して稼ぐアキとカオルのコンビはもちろん、強盗のプロたちのキャラもすばらしく魅力的に描かれている。皆、あまりまっとうな生き方はしていないが、決してワルではなく、少し影のある過去と、しっかりとした人生哲学を持って日々を歩んでいるのだ。そんな彼らの颯爽とした活躍ぶりが気持ちがよく、続きが読みたくなる傑作だ。・・と思う読者も多かったのか、続編あるいは姉妹編として、「ギャングスター・レッスン」と「サウダージ」の二作がすでに上梓されているようだ。7.5点。
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