- 大倉崇裕「白虹」 2011年12月17日
| 白虹
著:大倉 崇裕 PHP研究所 単行本 2010/12
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最近この作者でお馴染みになって来た山岳ミステリ。主人公の五木健司は、冬は下界で警備員のアルバイトをして、シーズンになると山小屋で働くことを繰り返している。彼には、ある出来事をきっかけに警察官を辞めたという過去があった。 自分の責任でないことは理屈では分かっているが、不幸な結果について自分を責める、というのはよくある話だが、この物語の中で、自分が命を救った遭難者について、主人公がこれほど自分を責めるのはしっくりと来ない。過去にもやはり自分を責めるような事件の経験があったにせよ、このようなケースならさすがに普通、そこまで責任は感じないのではないかと思う。前半は、後半への導入としてそんな事情が長めに描かれているのだが、そんなわけでところどころに違和感も感じた。 ともあれ、そんな思いが動機となって、事件の背景に疑いを持った主人公は、一週間の約束で山から下りて、独自の調査を始める。表向きは単純に見える事件だったが、理由も分からずいきなり襲われたりして、思いがけず、きな臭さの漂うハードボイルドちっくな展開になる。終盤、一気に明らかになる事件の真相の意外性はかなり大きい。ただ、一瞬「おおっ」となったが、そのあとあまりに意外すぎてやや冷めてしまったところはあったかも。7点。
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