- 歌野晶午「絶望ノート」 2010年07月06日
| 絶望ノート
著:歌野 晶午 幻冬舎 単行本 2009/05
|
ノートに殺したい人物の名前を書くと、その人物が現実に死ぬ、というのは某有名人気マンガに出てくる設定である。世の中の本作に対する感想の多くが触れているように、この小説の「ノート」はそれを思い出させる。とは言っても、名前を書くと死ぬというところ以外はほとんど違うし、もちろん物語の主眼点もまるで違っている。 中学2年生の少年、大刀川照音(たちかわしょおん)が綴る日記のノートの表紙には「絶望」と書かれている。そこには、彼が学校で受けているいじめの記録や、ジョン・レノンのファン(というかかぶれ)で働こうとしない父親に対する不満などが日々書き綴られている(ちなみに、本作品の各章の題名はジョン・レノンの楽曲から取られている)。そして、そこに誰それに死んでほしいと神様へのお願いを書いたら、現実に死んでしまったのだった。 物語が本格的に転がり出すのは半分を過ぎた辺りからで、前半はいじめに遭った様子や、恨み辛みや愚痴が妄想混じりに延々と書き連ねられていて、正直うっとうしいほどだった。必要なパートではあるが、何分の一かに縮めてもよかったと思う。余計なお世話だが、前半で放り投げる人もいるのではないかと心配になる。しかし、この作者の作品に馴染みのある読者なら予想できるとおり、トリッキーな仕掛けが施された本作の真価は最後まで読まないと味わえない。ノートの中で神に願うと人が死ぬという現象に、作者が仕掛けたトリックとは何なのか? 7点。
|